2015’05.27・Wed
※読む前の注意とお願い
この小説はPHANTASY STAR ONLINE 2(以下PSO2)の二次創作になります。Episode3-4までのネタバレを多分に含みますので、まだ本編を楽しみにされていて、プレイされていない方は読まないでください。
また、個人的見解もかなり含まれているため、プレイされた方でも考え方に納得できない部分が出てくると思いますので、それが許容できないという方も読まないでください。
極力PSO2の世界観は壊さないようにしてありますが、どうしてもゲームとは異なる点があります。重ねてご了承ください。
文章の表現、文体、読みづらい部分はあると思いますので、内容も含め、自分には合わないなと思われる方はそっと小説を閉じてください。無理して読んでもいいことは何もありません。
最後に、PSO2に関する設定等の著作権はSEGAに帰属します。二次創作とはいえ、小説自体は書いた本人に権利があると思いますので、ないとは思いますが、小説の無断転載はおやめください。
以上を理解していただいたうえで、読んでいただけると嬉しいです。
時間を割いて読んでいただけた方々が、少しでも楽しんでいただければ幸いです。
堅苦しい前置き失礼しました。
例えば、こんな狂想曲
DF【巨躯】&ゲッテムハルト after EP3-4
身体を乗っ取られてから、俺はずっと奴の背中を見続けている。身体を乗っ取られても意識は消えることなく奴と共存し、しかし、ただそこにあるだけだった。思うことはできる、考えることもできる。だが、そうして出した結論を俺にはどうすることもできない………はずだった。
「………すまねェな、シーナ―――いや、ディアを助けてもらった」
もちろん、実際口に出して話しかけているわけではない。意識は残っている。だから、語りかけるように考えれば意思は伝わるはずだ。
しかし、巨躯はそれに応えようとはせず、ただわずかにその身体をすくめてみせた。俺はその様子を見て、続ける。
「何故、俺に身体を使わせた?そんなことする必要はてめェにはねェはずだ」
元々の自分の身体を使うという表現はおかしな気もするが、乗っ取られた時点で上下関係は決している。それを考えると、一番しっくりくる表現方法だった。
「貴様の意思が、数秒、我の意思を上回った―――ただ、それだけのことだ」
後ろにあるゲッテムハルトの心を見ることもせず、ぶっきらぼうに言い放つ。
「それはおかしいだろォが。俺は散々、てめェから身体を取り返そうとしたんだぜ?だが、できなかった。それなのに、数秒とはいえ、あの時急に取り返せるのは説明がつかねェ」
取り込まれてから、ずっと俺は自分の身体を取り戻そうと足掻き続けてきた。だが、どうしてもできなかった。足掻いて足掻いて足掻き続けても、その度に奴の巨大さを痛感するだけで、そしていつしか俺は諦めてしまっていた。しかし、さっきの数秒は奴がわざと俺に身体を譲ってくれたような、そんな気がした。
その質問に巨躯は少し不快な様子を見せたが、今度は少し言葉を付け加えてもう一度答える。
「先程も言ったはずだ。貴様の意思が、我の意思を上回った、と―――貴様にとって、あの娘が意思を奮い立たせるほど、大事だということではないのか」
その答えに俺は何も返せなかった。俺が身体を取り返した数秒。俺がただ考えていたことは、ディアのことだけだった。
変な話ではある。俺はディアを犠牲にしてでも、ダークファルスを呼び出して、殺したかった。叩き潰したかった。十年前、俺から大切な人を奪った存在を、この世から完全に消し去ってやりたかった。
それしか、俺にはできなかった。あの時、大切な人を、シーナを守れなかった俺には、もう、そうすることしか生きがいは残っていなかった。全てを敵に回しても、全てを利用してでも、俺は復讐したかった。
同じようにあのときの責任を感じているのだろう、ディアはいつしか俺と一緒にいることを自分の生きがいにしていたようだった。何をするにもついてきて、俺の言うことは何でも聞いた。
俺はそれすらも利用し、失った恋人の名前で呼ぶようになった。ひどいことをしているのは分かっていた。しかし、なぜかフィルターがかかったように霞んでしまっている十年前の出来事を忘れないように、失ってしまった大切な人の名前で呼び続けることで、俺はシーナのことを心に留めておきたかった。ゼノの野郎に、誰に壊れたと言われてもいい、俺はダーカーを、ダークファルスを壊したかった。
だが、ダークファルスに身体を乗っ取られ、それでも残る意識でずっと考えた。巨躯が見たものを通して、もっと考えた。俺がしてきたことに俺自身後悔はない。そうするしか、俺にはなかったから、俺はどうしてもその道を選んだだろう。
俺が選んだこの道には、きっと未来はなかった。復讐を成し遂げられたとして、後に何が残っただろう。俺は何よりも先に、俺を壊してしまった。もう、俺は昔の俺には戻れない。
ディアには俺と同じ道を歩いて欲しくはない。自分が歩いてきた道を客観的に考える時間があったからこそ、出せた答えだった。ずっと傷つけ続けてきたディアに、俺ができるせめてもの償いだった。
俺という枷がなくなった以上、ディアはもう過去に縛られる必要はない。過去じゃなく、未来を見て歩いて欲しい。「俺のようにはなるな」―――それだけはどうしても伝えたかった。
考え込んでいることを感じ取っていたのか、巨躯は十分に間を空けてから、ゲッテムハルトに語りかける。
「………前言は撤回しよう」
そして、こちらを振り向くと、大きく一呼吸置いて続けた。
「貴様は―――ゲッテムハルトは弱き名などではない。過去と向き合い、事実を受け止め、前へ進もうとし、自分以外を慮るその意思は、弱気者にできることではない」
それだけ伝えるといつものように前を向いた。初めて振り返ったその横顔は、どこか優しく見えた気がした。
「………うざってェ」
俺はそう小さく呟いて、ずっと見続けてきたその背中からわずかに視線を反らした。
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