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2014’09.18・Thu

【小説】ここにいること(前編)

※読む前の注意とお願い

 この小説はブログ「走れ夢瑠。」内の梨衣、すいなをイメージして書いてあります。本人たちとは違う部分も多くあると思いますが、ご了承ください。また、極力マビノギ英雄伝の世界観は壊さないようにしてありますが、どうしてもゲームとは異なる点があります。重ねてご了承ください。
 文章の表現、文体、読みづらい部分はあると思いますので、内容も含め、自分には合わないなと思われる方はそっと小説を閉じてください。無理して読んでもいいことは何もありません。
 最後に、マビノギ英雄伝に関する設定等の著作権はNEXONに帰属します。二次創作とはいえ、小説自体は書いた本人に権利があると思いますので、ないとは思いますが、小説の無断転載はおやめください。

 以上を理解していただいたうえで、読んでいただけると嬉しいです。
 時間を割いて読んでいただけた方々が、少しでも楽しんでいただければ幸いです。
 堅苦しい前置き失礼しました。
 穏やかな青い空を、白い雲が流れていく。朝特有の爽やかな日差しが肌に心地良い。このまま目を閉じれば、もう一度寝てしまいそうだった。

 「んー………」

 出そうになる欠伸を噛み殺しながら、一つ大きく伸びをする。目覚めてからそれほど経っていない硬い身体に活を入れる。


 世界では人間と魔族との戦争が続いている。人々は女神が残した『魔族を滅せよ。彼らの血の最後の一滴が流れるとき、女神モリアンは再び降臨し、人々を楽園に導くだろう』という予言を希望として、日々戦いながら生き続けている。

 その予言を信じていないわけではない、かといって妄信しているわけでもない。ただ、昔から起こり続けているこの世界の戦いを自分の目で見なくてはならない気がして、私はコレンに傭兵として志願したのだった。
 しかし、それももう数ヶ月前のこと。初めは雑用も多かった傭兵の仕事もこなし、今では戦争の前線に出て戦うことが主になってきた。最初は指定されることも多かったが、基本的にどこの地域の戦争へ参加するのか、それは傭兵個人個人の判断に任されている。


 「―――今日はどこに行こうかな」

 伸ばし終わった身体を元に戻して視線を前に移すと、足元に犬や鳥たちが集まってきていた。嬉しそうに尻尾を振りながら、こちらを見上げている犬と目が合う。宿屋前のベンチに座っていたのだが、この村にはそこかしこに動物たちがあふれており、人との生活に密に関わっている。
 朝食用に持っていたパンを一つ鞄から取り出すと、少しずつ千切りながら動物たちへと放り投げる。少し取り合いになりながらも、飛びついてはおいしそうに口へと運んでいく。


挿絵1


 それをのんびりと微笑みながら見ていると、村の入り口の方から誰かを呼ぶような声がした。時間が経つにつれて、それが私を呼ぶ声だとわかる。
 村の入り口から、こちらに向かって紙を握った手を大きく振りながら駆けてくる女性が見えた。長い髪を頭の後ろで一つ縛った大きなポニーテールを左右に揺らしながら、元気いっぱいに私の名前を呼び続けている。驚いた動物たちは、自分のパンを確保しながら散り散りになっていく。

 「りーさん…!お願いが…あるん…です!」

 彼女は息を切らして私の元へたどり着くと、息を整えようとすることもなく頭を下げる。

 「そんなに慌ててどうしたんですか?―――それより何より、おはようございます。あと、ちゃんと息を整えて落ち着いて」

 「あ…おはよう…ござい…ます」

 彼女は素直に挨拶だけ返すと、二、三度大きく深呼吸をする。乱れていた呼吸が少しずつ落ち着いていくのがわかる。
 彼女の名前は、すいな。偶然同じ日に傭兵として入り、共に色々な仕事や戦闘をこなしてきた仲間だ。まだ数ヶ月とはいえ、生死を分けるような仕事を共有してきただけあって、月日以上にしっかりとした絆がお互いに出来ていた。

 「………それで、一体どうしたんですか?」

 私はしっかりと彼女が落ち着くのを待ってから、ゆっくりと促す。それを受けて、握り締めていた紙を良く見えるように広げて、指差しながら言う。

 「これが欲しいんです!手伝ってください!」

 見出しに『テンプテーショナー』と書かれたその紙には、材料が箇条書きにされていた。指差されたところには、『黒曜石の杖、クラウスの骸骨飾り、クラウスの鎧の欠片』と書かれている。ざっと眺めたところ、それ以外にはぐりぐりと丸くチェックがついていた。

 「昨日、何か一生懸命にやってると思ったらこれでしたか―――それ以外の材料は揃ってるんですね。いいですよ、行きましょうか」

 頷きながら言うと、彼女は目を嬉しそうに輝かせながら「わーい!」と跳びはねる。

 「では、準備しましょう。忘れ物しないように―――ちゃんとポーション持って行くんですよ」

 「はーい!」

 彼女は大きく手を上げて言うと、宿屋の中へと駆け出す。私はおおよそ答えの見当がついていた質問を、その背中へと投げかける。

 「どうして、これを作ろうと思ったんですか?」

 彼女は振り向くと満面の笑みで誇らしげに答える。

 「もちろん、かわいいから!」


挿絵2


 入団当初からそうだったが、彼女はかわいいものには滅法目がないのだった。戦争の最中に、とも思うが、殺伐とした中でも自分を失わない彼女を素敵だとも思う。

 「ですよね」

 私はその予想していた答えに笑いながら、腰を上げて準備に向かった。

―――

  コレンの港から船に乗り込み、ヒルダ森の遺跡を目指す。傭兵団の情報によると、クラウスはその遺跡の奥地に拠点を構えているようだ。
 風をしっかりと帆に受け、船は水上を軽快に進んでいく。私は荷物を見て忘れ物がないことを確認してから、剣を取り出して手入れを始めた。それを見て、すいなも私の隣に来ると、背中に背負っていた巨大な鎌を下ろして同じように手入れを始める。

 私が使うのは二本の剣。右手は逆手に、左手は順手に持って戦う。大きな一撃というよりは、手数と鋭さで敵を倒していくスタイル。逆に、すいなは背丈より長く、巨大な刃のついた鎌を大きく振り回し、強い一撃で敵を叩き伏せていくことを得意としている。
 グリップが滑りやすくなっていたり、刃が錆付いたり刃こぼれしていないかチェックしながら、砥石で研いでいく。武器は防具と同じく生命線―――どんな小さなことでも見落とすことがないように目を光らせる。

 きっちりと隅々まで見て、手入れが行き届いていることを確認すると、集中で張り詰めていた気と体をほぐすように少し大きな動きで空を見上げる。隣を見たが、すいなはまだ手入れの途中だったので彼女が終えるのを待ってから声をかけた。

 「ヒルダ森は行ったことありますが、クラウスは初めてですね。魔術を使ってくるようなので気をつけましょう」

 傭兵団からもらった資料には、大まかな外見と主にどんな攻撃を仕掛けてくるか程度の情報しかなかったので、実際に対峙してから考えるしかない。不安ももちろんあるが、何も分かっていないのとは雲泥の差だ―――わかっていることだけでも、しっかり共有しておくことは重要になる。

 「はい、気をつけます!でも、きっと慌てちゃうから、いつも通り指示お願いします」

 彼女は熱の篭った視線をこちらに向けながら、頭を下げる。

 「わかりました」

 それを受け止めて、大きく頷いて了承の意を伝える。

 「それにしても、いつも戦いに行く前の船の上ってドキドキします」

 彼女は自分を落ち着かせるように胸に手を当てながら、身体が上下するほど大きく呼吸を繰り返している。

 「そうですね―――でも、緊張は大事らしいですよ。一瞬でも油断は命に関わりますからね」

 「確かにそうかも!」

 それを聞いて、うんうん、と何度も頷きながら納得すると、胸に当てていた手を下ろしてじっと前を見た。しかし、一分もしないうちにその顔がどんどん険しくなっていく。
 私はそれを見て、彼女のわき腹をつんっと指先で突っつく。くすぐったかったようで、一気に険しい表情が崩れて笑いが漏れる。

 「大事っていっても、適度な緊張ですよ。緊張しすぎはもちろんよくないです―――あ、見えましたよ」

 私が船の進む方角を指差すと、鬱蒼とした木々の生えた陸地が見えた。木々の間に、ところどころ朽ち果てた遺跡が顔を覗かせている。そこには爽やかな朝に似つかわしくない、陰鬱な雰囲気が色濃く感じられた。

 船が帆をたたみ、速度を落とす。船頭たちが船を上手く操って、手ごろな岸辺へと着岸させた。
 二人は足元に気をつけながら、ゆっくりと船から降りる。魔物が拠点としている場所に長居をするのはただ危険な行為―――日が落ちる頃には迎えに来ると言い残し、船は速やかに離岸して、来た航路を引き返していった。

 こちらに手を振っていた船頭が帆を張り、風を受けて再び水上を走り出したのを見送ってから、改めて森を見やる。
 それほど背丈はないが、生い茂る木々が二人の侵入を拒んでいるかのようだった。その中に、逆にこちらは招き入れるかのように、遺跡の入り口となる崩れかけた二本の柱がこちらを見つめている。

 「さて、行きましょうか」

 私は隣で不安そうに見つめているすいなを促すように声をかけると、剣を両手に持ちゆっくりと歩き出す。すいなもその言葉に頷いてから、鎌をぎゅっと握りなおして後に続いた。

 二本の柱をくぐると、そこから先には巨大な遺跡が広がっていた。元から自然にあった巨大な岩場を上手く利用し、岩自体を削り上げて柱や壁、階段までもが作られている。人間が作ったのか、魔物が作ったのか―――それは今知る由もないが、細部には彫刻まで施され、朽ち果てた中にも神聖な感じが見受けられる。
 長い年月が経過したことで、ところどころに隙間から植物が生えていたり、風化が進んでいたりもするが、作られた当初はどれほど美しく壮大な遺跡であったのかが容易に想像できた。

 そんな感慨にふけることができたのも数分。周囲に気を配りながら歩いていた二人の耳に、何かを引きずる音が届いた。入り口からは真っ直ぐ少し広めの通路が伸びていたが、その突き当たり、少し開けて右に折れている岩壁の影から聞こえる。そこから、すぐにその音の正体が姿を現した。

 薄汚れた褐色の肌。太くしっかりとした腕には、大きな棍棒が握られている。一見人間のようにも見えるが、大きく少しとがった耳、少し飛び出した顎にある口は歯茎を大きく露出させ、鋭利な歯が生えている。
 トロールと呼ばれているその魔物が二体、棍棒を引きずりながらのそのそと歩いてくる。こちらに気づくと、白く濁った目をこちらに向けて少し笑うような表情を見せてから、棍棒を振り上げてこちらに駆け出した。

 「戦闘開始―――ですね。すいなさんは左、お願いします」

 「了解です!」

 一つ気合を入れるために声をかける。返事を聞いてから、私もトロールに向かって駆け出した。
 こちらに向かってくるトロールは道をふさぐように横に並んでいる。個体差があるようで、左側のトロールの方が足が速く、二体には一メートルほどの差がついていた。

 知能がそれほど発達していないのか、トロールは単純な動きしかしないため、よく見れば攻撃を避けることは難しくない。
 トロールは自身の攻撃の間合いに入ると、駆けている勢いを乗せて、振り上げていた棍棒を私の頭目掛けて振り下ろしてくる。私は一歩右へと避けると、隙だらけの体に左足で蹴りを入れる。バランスを崩したのを感触で確かめてから、右のトロールへと意識を集中させる。

 左のトロールと同じように棍棒を振り下ろしてくる。その腕を狙って、左の剣でなぎ払う。短く悲鳴のような声を上げて、斬られて力が入らなくなった腕の軌道が横へと反れた。空を切った棍棒が地面へと叩きつけられる。
 私はなぎ払った勢いを殺さないように体を回転させ、右の剣でトロールの体を斬りつけながら駆け抜ける。絶命したトロールは駆ける勢いのまま頭から地面に激突し、滑っていった。

 前方から他には魔物が来ないのを確認してから、振り向く。大きくなぎ払った鎌が、ちょうどもう一体のトロールを仕留めていた。すいなは私が見ていることに気づくと、少し得意げな表情を見せてこちらに駆け寄ってきた。

 「クラウスのところまでかなりありますが、頑張りましょう。来たことがある場所とはいえ、油断しないように」

 「はい!」

 すいなに言うのと同時に自分にも言い聞かせながら、前へと向き直る。それから、一言付け加える。

 「―――背中、預けましたよ。後ろは任せます」

 「頑張ります!」

 任せてください、とは言い切らないところが彼女らしいと思いながら、遺跡の奥へと再び歩きだした。

―――

 「ふぅ………」

 もう二時間以上は経っただろうか―――私は大きく一つ息を吐いた。
 太陽は真上へと昇り、燦々と照りつけている。木々が生い茂っているおかげでそれほど暑くはないが、午前中に比べるとかなり気温は上昇していた。二人の額にも汗がにじんでいる。

 あれからかなりの数のトロールを倒しながら進んできたが、まだクラウスの拠点にはたどりつけてはいなかった。傭兵団の情報によるとそろそろのはずなのだが、トロールの数が多く、それほど進めていないのかもしれない。
 そう判断すると、傭兵団でもらった地図を広げた。進んできた道筋を思い出しながら、指でたどって現在地を確かめる。
 やはり、目的地は近い。今いる通路を抜けると大きな広場になっており、そこにこれまた大きな建物があるようだ。

 後方の安全を確認し終わったすいなが、地図を覗き込んでくる。彼女もそれを確認したようで、疲れの見えていた瞳が少し元気を取り戻す。

 「あと少しですね―――この広場まで行ったら、休憩しましょう」

 「はい!お腹空きました!」

 その言葉で朝から何も食べていないことを思い出す。不思議と気づいたことで、急に空腹感が襲ってきた。

 通路を抜けると少し広くなり、そこから長めの階段が広場へと繋がっていた。数メートル下の広場には、中央に石畳の通路が伸び、再び階段を挟んで正面に佇む巨大な建物の入り口へと続いていた。
 通路の脇には崩れかけた石柱が一定の間隔で立っており、通路の左右に広がる地面には、樽や壷などが雑然と置かれている。広場の周りは岩壁に囲まれており、外敵を拒んでいるかのようだった。

 「………邪魔ですね」

 「………ですね」

 思わず、二人して愚痴がこぼれる。

 通路の真ん中あたりに、複数のトロールが集まっていた。さらに、その少し奥にも数匹のトロールが見て取れた。遮蔽物も特にないため、おそらくそれ以外に魔物は隠れていない。

 「休憩前の一仕事ですね―――サポートお願いします」

 すいなが頷いたのを見ると、一気に階段を駆け下りる。足音に気づいたトロールたちが、一斉にこちらを向いて各々の武器を構える。
 私は腰を落として姿勢を低くすると、手前の集団に駆け込みながら水平に構えた二本の剣を体ごと回転させながら鋭く斬りつける。何匹か倒したのを感じながら、手前の集団を勢いを落とさずに駆け抜けると、もう一つの集団に向かって右足で踏み切って上へと跳躍する。

 「はあああああっ!」

 叫びながら左半身へと力を込める。放物線の頂点から、集団の中心へと落下していく。

 ―――ドンッ!

 力を込めた左半身が着地した地点から、放射線状に強力な衝撃波が沸き起こる。それは集まっていたトロールたちを吹き飛ばし、岩壁や石柱へと叩きつけた。
 すぐさま着地点から前へと転がって、すいなの方へと向き直る。吹き飛ばされたトロールたちが動かないのを一体ずつ目視してから、最後にすいなの方へと目を向ける。

 すいなが左右に二度、大きく鎌を真横に振るう。私が仕留め損ねていたトロールたちが、それで崩れ落ちるのが見えた。全てのトロールが動かないのを確認してから、お互い歩み寄る。

 「この中のようですし、一度休憩しましょう」

 木を組み上げて、焚き火の準備を始める。幸い、広場に燃やせそうな木材はたくさんあったため、点火に困ることはなさそうだった。
 無事に火をつけると、鞄からパンと干し肉を取り出してあぶる。食欲をそそる香ばしい匂いが鼻をくすぐる。表面が軽くカリカリになったところで、それをすいなに手渡した。

 「ありがとうございます。いただきます!」

 それを嬉しそうに受け取ると、パンの上に肉を乗せて、すぐにかじりついた―――よほどお腹が空いていたのだろう。その様子を見た私はその後の展開を予想して、急いで鞄から水の入った水筒を取り出すと、むせ始めたすいなに向かって手を伸ばす。
 苦しそうにしながら何とかそれを受け取ると、のどに詰まっていたパンを水で一気に流し込んだ。ふーっと大きく一息吐いて、喉の辺りを軽く叩く。

 「そんなに急がなくても大丈夫ですよ。ゆっくり食べてください」

 私がそう促すと、罰の悪そうに照れ笑いを浮かべてから、今度はゆっくりと食べ始めた。それを確認してから、自分の分を鞄から出して、同じように火にあぶってからまずパンを口へと運ぶ。

 かりっと焼けた外側とふわっとしている内側の食感、続いて広がるほのかな甘さ。それをゆっくり楽しみながら、そこに一口、干し肉をかじって飛び込ませる。干し肉の塩辛さがパンの甘さと上手く絡み合って、口の中を満たしていく。
 自然と幸せな気持ちになって笑顔になる。それを見ていたすいなも、幸せそうな笑顔をこちらに向ける。私もすいなに倣って、残りの干し肉をパンの上に乗せて食べることにした。


挿絵3


 食べながら、クラウスがいるであろう巨大な建物を見上げる。十メートルは優にある石造りの建物は、遺跡と同じように長い年月の経過でところどころに木や草が根を下ろしていたが、そんなことはお構いなしといった様子で悠然と佇んでいる。風化して崩れ落ちている部分もあるが、全体ではしっかりした造りで脆さは微塵も感じられなかった。

 「そういえば、りーさん。聞きたいことがあったんです」

 観察に夢中になっていた私に、先に食べ終わったすいなが声をかけた。私は残っていた最後の一欠片を口に放り込むと、すいなの方に顔を向けた。先に食べるようにと「どうぞ」と手を差し出して促してくれたので、私はしっかり噛んで飲み込んでから、「何でしょう」と返事をした。

 間が空いたせいで聞きにくくなったのか、少し視線を漂わせてから私と視線を合わせると口を開いた。

 「今更と言えば、今更なのですが―――どうして、りーさんは私にここまで付き合ってくださるんですか?」

 始めの部分は少し声が震えていたように聞こえた。私からすいなに自分の希望を進んで言うことはあまりないため、自分ばかりが振り回してしまっているという不安な気持ちがそこには込められているのかもしれない。

 「それは………」

 答えようとして私は思いとどまる。『偶然同じ日に傭兵になり、一緒に色々な仕事や戦闘をこなしてきたから』―――確かにそうかもしれない。
 しかし、本当にそれだけなのだろうか。他にも同じ日に傭兵になった人は数人いたし、何度か同じ仕事や戦闘をした人だってその中にはいる。でも、その人達とはこれといって仲がいいというわけではなく、逆に仲が悪いというわけでもない。なら、なぜすいなだけがこれほど仲良く、時間を共にしているのか―――。

 答えの途中で考え込んで黙ってしまった私を、すいなが心配そうに覗き込む。

 ―――ドォォォォォォン!

 そこに大きな音が響き渡る。それで私は考えを中断して、音のした方を見る。すいなも反射的に同じように顔を向けていた。音はクラウスがいるとされている、巨大な建物の中からのようだった。
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待ってました!!!

お二人の信頼関係が
とても素敵ですね…(*´ω`*)♪
背中を預けられるって
とてもかっこいいです!!憧れます!

細かい描写のおかげで
「ああ、あそこね!」とすぐ気付けて
どのシーンでもドキドキワクワクしながら
読んでました(笑)

個人的には休憩のシーンが最高です!
お腹すきます!!
ポークジャーキーが食べたくなりました!

後編も楽しみにしてます ̄(=∵=) ̄

きらみ:2014/09/18(木) 10:22 | URL | [編集]

知らない世界観・世界設定でのファンタジー小説を読むのと違い、実際にプレイしてきた世界観の小説って、梨衣さんの上手い表現力もあって違和感なく入り込めますね。

ヒルダ森の情景とか戦闘描写とか、知ってる場所と動きなだけに「おお~~」とドキドキしちゃいました!!
りーさん視点からの『すいな像』みたいなものが、うちが今まで感じていたものと近い感じがしてニヤニヤが止まりません♪
「背中、任せます⇒頑張ります」とかねw

挿絵も超可愛い~~♪
うちの中で【スチームヒロイン&パンジーチパオ】は
【梨衣&すいな】で脳内変換されますw

夢中になって読んでもうた・・・仕事中なのに
仕事中なのに!!www
続きも楽しみにしてます!!!

夜天王はやて:2014/09/18(木) 10:54 | URL | [編集]

私も仕事中なのに3回位読んじゃいました!
そして、仕事ほっぽり出して、剣を持って富士の樹海にトロールを探しに行きたくなりました!

昔、何かの小説の講評で「何事もない日常の出来事で読者を引き込める筆力が大事だ」みたいなのを読んだのですが

通い慣れたヒルダ森の懐かしさをほのかに感じさせながらも、小説ならではの目新しさをふんだんに織り交ぜたまろやかな舌ざわりが最高です…!

すいなさんのイラストも、ずっと昔に読んだ冒険ライトノベルの「フォーチュン・クエスト」を彷彿としました。ページの各所に主人公たちが食べてるご飯のレシピとかがイラスト付きで紹介されるんです…!
キャラクターを身近に感じられて、もう…もう…(`;ω;´)

2枚目のイラストの笑顔もさいこうですた…!
『守りたい、この笑顔…!』


これはゆめるさんの挿絵で小説を買いたいレベル…!

悲涙:2014/09/18(木) 19:34 | URL | [編集]

コメント返しは梨衣さんがするのがいいんじゃないの!といわれたので、偉そうで申し訳ない気もしますが、小説に関するコメントは私のほうでお返しします。


>きらみさん

お待たせして、すみません。
思ったよりかかってしまいました。

信頼関係が伝わってよかったです。
ただ、実際だとすいなさんの方が走っていくので私が背中を預けられていることの方が多い気がします。

お褒めいただきありがとうございます。
細かい描写、というよりは読みやすい、伝わりやすいに重点を置いて書いた(つもり)ので、楽しんでいただけてよかったです。

休憩シーンはすいなさんも同じことを言ってました。
このパン超おいしそう!食べたい!
前半を渡したときの一番の感想がそこだったので、思わず笑ってしまいました。

後編は小説自体は仕上がっているので、すいなさんの挿絵が終わったらすぐあがると思います。
ぜひ、すいなさんを応援してあげてください。


>はやてさん

お褒めいただきありがとうございます。
上手く情景が伝わったのなら、嬉しいです。
何度も出航してSS取って、にらめっこしたかいがありました。

すいなさんに持つイメージってやっぱり、皆さん近いのでしょうか。
私は付き合いが長いからか、小説で書いていても意識しないですんなりと受け答えが出てくるので、特に意識して書いてはいない分、私のすいなさんへの印象が素直に出ているのかもしれません。

挿絵すごいですよね。
白黒でそれっぽくでいいんじゃないですか、といっただけなのですが、雰囲気がすごくしっかり出ていて驚きました。

お仕事中なのにすみません。
次はきっとすいなさんが週末にあげてくれると思いますので、お仕事気になさらず、お読みになってください。


>悲涙さん

これまたお仕事中にすみません。
続きは休みの日に、お仕事を気になさらずにお読みになってください。
私から言えることは、頑張れ、すいなさんの一言です。

富士の樹海だと剣も通用しないトロールよりもっと怖い何かがいそうです。
心配なので、お一人では行かないでくださいね。

お褒めいただきありがとうございます。
コメントを返しながら、皆さんきっと通いなれてる分、下地があるので、イメージとして伝わりやすい部分もあるんじゃないかなと思いました。

フォーチュン・クエストは好きで私も読みました。
深沢先生の読みやすく馴染みやすい文章が好きで、初めて文章を書こうと思ったのはその影響が大きいです。
私の場合は堅苦しい感じの文章で、読みやすくちゃんとできているかはわかりませんが、それでもそこを気をつけようと思うのはそこからだと思います。


>お三方へ

時間を割いて読んでいただきありがとうございます。
楽しんでいただけたようで、すごく嬉しいです。
後編はかっこいいすいなさんも出てきますので、楽しみにしていてください。
あと、一箇所せっかくなのでスキル名を入れようと思い、入れたところがあります。
厨二くさいといわれましたが、後悔はしていません。

以上、ちょっぴりネタバレでした。
よろしければ、後編も引き続きお楽しみください。

頑張れ、すいなさん!

梨衣:2014/09/20(土) 16:45 | URL | [編集]

きらみさん

私も前半貰ったときにパンとジャーキーまじうまそうって言ったら
そこ?!ってつっこまれました!
深夜にあの一文を読んだらいけないです!
外はカリッ中はフワッなパンにジャーキーのせて食べたくなっちゃう!

…今思い出して口の中によだれがいっぱいです。

花より団子よね!

すいな ゆめる(suina-yumeru):2014/09/22(月) 22:02 | URL | [編集]

はやてさん

なんですかね…自分じゃない人に自分を動かして貰うってなんか恥ずかしいですね…!w
いつも描いている「すいな」がほかの人の手で動かされるこのドキドキ恥ずかしい感!
日本語がおかしいです!すみません!

前半は結構手抜きが垣間見られる挿絵ですが、後半は頑張りました!
こうご期待…ってもうUPされてます!すみません…!

すいな ゆめる(suina-yumeru):2014/09/22(月) 22:10 | URL | [編集]

ひるいさん

りーさんのセンスに脱帽です!
こんな才能隠してたなんて…!

小説後半に、私が本当に守りたい笑顔を全力で描きました!
わたしの下心丸出しの笑顔とは格が違うんですぜ、へへへっ!


初めて小説の挿絵を描いたんですが、
改めて自分の実力不足を再確認しました。
カッコイイ文章に見合ったカッコイイ絵がかけないんです。
すごく時間もかかってしまいましたし。

今はまだこれしかかけないけれど、
もっともっと沢山練習して、
素敵な絵をかけるようになって、

その時、りーさんが小説を書いてくれたなら挿絵描かせて欲しいです!願望…!

すいな ゆめる(suina-yumeru):2014/09/22(月) 22:22 | URL | [編集]

りーさん

りーさん、素敵な小説をありがとうございます。
今の私の精一杯です!
いつかもっと上手くなって、りーさんの小説の魅力を最大限に引き出せるようになりたいです。なります!!

私と絡めるとワンパターンなネタしかでなそうですが…
何か思いついたらまたかいてください?w

たくさんの人にりーさんの小説を読んで貰えて、
感想いただけて、自分のことのようにうれしいです!
はすはす!

すいな ゆめる(suina-yumeru):2014/09/22(月) 22:28 | URL | [編集]

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